親が老人ホームに入ることに!実家を空き家にする場合の注意点
記事作成日 2024.07.17 / 最終更新日 2024.11.07
親が終の棲家として老人ホームへ入ることになった場合、親が帰ってくるところ残しておいてあげたいと、実家を空き家のままにしておく方もいるでしょう。
一旦空き家となるけれど、後々老人ホームの費用として売却しようと考えている方もいるでしょう。
しかし、やはり売却したい、となった場合に困る場合があります。
この記事では、親が老人ホームに入り実家を空き家にしておく場合に知っておきたいことをご紹介していきます。
目次
老人ホームに入る準備
老人ホームなどの高齢者施設に入るとき、まずは本人の持ち物などの準備をします。
老人ホームに入るときの持ち物は、概ね以下のようなものですが、施設により異なるので、確認が必要です。
- 日用品(洗面用具、タオル、ティッシュペーパー、コップ、スリッパ等)
- 衣類(パジャマ、普段着、下着、靴等)
- 処方されている薬、筆記用具、本等
また、入居準備と同時に、家財の整理、財産の一覧表を作っておくことをおすすめします。
老人ホームに入る前に確認したいこと
老人ホームに入るための準備はたくさんありますが、本人の身の回りの準備と並行して空き家となる実家の名義を確認しましょう。
実家の名義を確認する
まず、実家の名義がだれになっているのかを確認しましょう。
家の名義は法務局で登記簿謄本(登記事項証明書)を取得すれば確認することができます。
もしも、前の持ち主である祖父母から自分の親が相続したのに親の名義に変更がされていない場合、相続登記は期限が決まっているので、一定の期間を超えてしまうと罰金を払うことになる恐れがあります。祖先の代から住んでいる家を親が相続しているような場合は一度確認してみましょう。
相続登記しないことによる罰則やデメリット
令和6年4月相続登記が義務化され相続等により所有権を取得したことを知った日から3年以内に、正当な理由がないのに申請を怠ったとき、10万円以下の過料の対象となります。
これは、過去の相続についても適用されるので、速やか相続登記をする必要があります。なお、相続登記の義務化については「【令和6年4月1日から施行】相続登記の義務化で違反の場合は罰則!必須知識をまとめて解説」を参照してください。
また、名義変更をしていないと、売却したいと思っても、まずは名義変更手続きをしなくてはならず、売却のタイミングを逃してしまうかもしれません。加えて、老人ホームに入った親が認知症なので意思能力が無くなってしまうと、名義変更の手続きをするために成年後見人を選んだり、色々な手続きが必要になる可能性もあります。
遺産分割のやり直し
実家が祖父母等の名義のままで親に名義変更されていなかった場合には、まずその名義の方の相続手続きに遡る必要があります。その際、相続人が既に亡くなっていたら、代襲相続が発生する可能性があり、その代襲相続人に事情を話すところから始める必要があります。このように、遡っての遺産分割はとても手間がかかります。
代襲相続については「再代襲相続はどこまで?代襲相続との違いや、再代襲できない場合、養子の場合についても解説」を参照してください。
空き家の管理
もし空き家を管理もせずに放置してしまうと罰則が適用されることがあるのをご存じでしょうか。
令和5年12月13日、空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律が施行されたことにより、適切に管理をするように命令されても従わなければ最大50万円以下の過料に処される場合があります。
それ以外にも、税負担が軽減される特例を受けられなくなるなどのデメリットもあります。
だれが、どのように管理するのかをしっかりと話し合っておきましょう。
施設に入った親の認知症への対策
親が老人ホームに入ったのち、認知症になり、判断能力が無くなってしまうことも考えられます。
空き家にしていた実家を老人ホームの費用として売却しようと考えた場合、親の判断能力が無くなっていたら、親の名義である実家を売却するには、成年後見人の介入が必要となり時間もお金もかかってしまいます。
成年後見人とは
成年後見人とは、認知症や知的障害等の精神上の疾患により判断能力が著しく低下した方の財産を保護するために、家庭裁判所から選任されて、ご本人の財産保護や身上監護を行う者のことです。
成年後見人の選任手続き
成年後見人を選ぶためには、家庭裁判所に「後見開始の審判」の申し立てを行う必要があります。後見開始の審判の申し立ては、被後見人となる者の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。
家庭裁判所に成年後見人を選任してもらうための後見開始の審判の申し立てを行ったのち、家庭裁判所調査官は、被後見人となる本人や後見人候補者と面談をして、本人や親族の生活状況、申し立てに至った経緯などを調査します。
最終的に、裁判所が、本人の判断能力が著しく低下していると判断した場合は、後見開始の審判がなされ、成年後見人が選任されます。
審判までの期間は通常2~3カ月で、費用については、家庭裁判所への申し立てを自分自身でおこなった場合にかかるのが3万円程度ですが、成年後見人には通常は月額3〜6万円程度の報酬を払います。成年後見人を選任したら、基本的には被後見人が判断能力を回復するか亡くなるまで職務を全うするので、それまでは月額の報酬を支払い続けることになります。
成年後見人については「成年後見人とは?選び方や費用、法定・任意後見人と家族信託の違い」で詳しく解説しています。
家族信託でできる認知症対策と相続対策とは?
老人ホームに入るときには、まだ意思能力がある状態であれば、家族信託で空き家を管理運用する契約をしておくこともできます。
家族信託とはお金の管理権限を家族に託せる契約です。認知症になった時などに備えて、財産管理を誰に託しどのように使うかを、元気なうちに自分で決められるのが特徴です。契約内容は自分の状況に合わせて設計することができます。
例えば、家の名義を受託者である子の名義に変更します。認知症などで親の意思確認ができなくなった場合でもスムーズに実家を売却する手続きをすることができます。
また、家族信託には遺言機能を持たせることができます。万が一のときに備えてどのように財産を継承するのかということも契約内容に入れておくのもよいでしょう。
なお、家族信託については「家族信託とは?仕組みやできること・デメリットもわかりやすく解説!」で詳しく解説しています。
まとめ
実家を空き家にする場合には、事前にリスクを検討する必要があることを解説してきました。
事前に適切な対応や計画を立てることで解決策を見つけることができます。
どのような対策が最適かは個々の状況によりますので、専門家に相談することをお勧めします。
認知症家族信託ガイドでは家族信託に精通した専門家をご紹介していますので、気軽にご相談ください。