軽度認知障害、MCIとは?症状や認知症との違いや対策
記事作成日 2024.07.17 / 最終更新日 2024.10.22
最近物忘れが増えてきて家族から認知症じゃないの?と軽口をたたかれることがあるけど、今まで通り生活はできているし、大丈夫よね…?こんな不安がよぎったことはないでしょうか。
認知症を発症する前段階の軽度認知障害(MCI)をご存じでしょうか。
この記事では、軽度認知障害(MCI)とはどんな症状か、認知症との違いについてわかりやすく解説します。
軽度認知障害(MCI)とは?
軽度認知障害とは、認知症の前段階で認知症とされるほどではなく、日常生活に困難をきたす程度でもないグレーゾーンの段階をいいます。そのまま見落としたままにしてしまうと、認知症へと進行する可能性があります。
軽度認知障害は、Mild Cognitive Impairmentの頭文字をとり、MCI(エム・シー・アイ)と呼ばれています。
軽度認知障害(MCI)の段階では、適切な予防と対策をすれば、発症を遅らせたり、健常な状態へ戻ることもできます。
軽度認知障害と認知症の違い
認知症と軽度認知障害(MCI)の違いは、自立した生活を送れるかどうかです。
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軽度認知障害(MCI)の症状
軽度認知障害の症状は、記憶障害、実行機能障害というアルツハイマー型認知症と似たものが現れます。
初期症状なので、それほど目立ったものではありませんが、下記のようなことに思い当たる場合は注意が必要です。
- 財布や鍵など、物をどこに置いたのかわからなくなることがある
- 置き忘れやしまい忘れをすることが多くなった
- 蛇口やガス栓の閉め忘れなどが増えた
- 数分前に聞いた話を思い出せないことがある
- 同じことを言ったり聞いたりする
- 今日が何月何日か、何曜日かわからないことがある
- 言いたい言葉がすぐに出てこないことがある
- 物の名前が出てこないことがある
- いつもの場所のはずなのに道に迷ったことがある
- 以前は好きだったことや趣味に対する興味がなくなってきた
- 日課をしなくなった
- テレビドラマなどの複雑な話が理解できなくなってきた
- ささいなことで怒るようになった
- 夜中に急に起きて騒ぐことがある
軽度認知障害の診断方法は今のところ確立されていません。あくまで面談や認知機能検査、脳画像検査などの結果から、医師が総合的に判断します。
何も対策をしない場合、そのまま認知機能が低下して、半数以上が5年以内にアルツハイマー型認知症に進行すると言われています。
アルツハイマー型認知症は、発症すると完治することはありません。しかし、軽度認知障害の状態であれば早期の治療で元の状態に戻れる可能性もあります。
認知症は他の病気と同様に、放置しておくことは非常にリスクがあります。単なる高齢に伴うもの忘れと判断せず、違和感を感じたら一度病院を受診してみましょう。
認知症が不安なときの病院選びについては「認知症の診断の病院選びと診断の流れ・診察を拒否するときの対処法」を参考にしてください。
認知機能低下の予防対策
認知機能の低下を予防するするには以下の3つが重要と言われています。
- 生活習慣(運動・食事・睡眠)
- 人とのかかわり
- 脳のトレーニング
1.生活習慣(運動・食事・睡眠)
軽度認知障害の対策に食生活の改善は非常に重要です。糖質はなるべく控えて、たんぱく質やビタミンを意識して摂取するようにしましょう。
いきなり激しい運動をしようとせずに、まずは散歩やストレッチといった軽いものから始めてみましょう。無理ない範囲で継続していくことで、自然と運動することに抵抗がなくなります。
2.人とのかかわり
軽度認知障害と診断がおりることで、人付き合いに消極的になってしまうこともあります。しかしそれでは、症状は悪化してしまいます。
たくさんの人と話をすることは、脳へ良い刺激を与えてくれます。家族や友人と明るい会話をすることをおすすめします。ただし、人と話すことがストレスになるという人の場合は、無理をしないで、自分のペースで気持ちの良いコミュニケーションを心がけましょう。
睡眠については、短すぎても長すぎても認知症のリスクにつながるとされています。就寝直前のテレビやスマートフォンを控えたり、カフェインやアルコール摂取を控え良質な睡眠をこころがけましょう。
脳のトレーニング
脳のトレーニングというと、脳トレと名前の付いた脳の活性化クイズやゲームのようなものを想像するかもしれません。しかしそのような特別なものでなくても好きな音楽を聴いたり、楽しい映画をみたりということも脳の活性化のエネルギーになります。
病気の進行におびえて、くよくよして過ごすことは脳にも良くありません。脳に良い刺激を与えながら、前向きに生活することが大切です。
軽度認知障害(MCI)、認知症への対策
軽度認知障害(MCI)、認知症との診断された場合の対策として、家族では以下のようなことを話し合っておきましょう。
- 外部との窓口
- どこで介護するか
- 見守り方法
- お金について
1.外部との窓口
ケアマネジャーなどとのやりとりが発生するので誰が対応窓口になるのか決めておきます。
2.どこで介護するか
認知症になった場合に介護するのは親の自宅か、介護者の家か、施設を検討するのかなどについて話し合っておきましょう。
3.見守り方法
親に会いに行く頻度や、介護者が仕事をしている場合は勤め先の介護休暇などの制度について調べましょう。
4.お金について
施設を考えている場合はどのくらい費用が必要かしらべましょう。
また、親の財産状況も把握しておきましょう。具体的には以下のような項目について調べます。
- どの銀行に口座があるか
- 年金収入はどのくらいか
- 株式など有価証券は持っているか
- 生命保険を契約しているか
- 実家は親の名義か
- 実家以外に不動産があるか
- 借金などの負債はあるか
親の財産管理
介護は基本的には親の財産でおこないましょう。
自分自身の老後の費用についても準備しておく必要がありますし、介護は長期間に渡る可能性があります。相続財産を減らすことは相続対策にもつながります。
親の財産管理の方法については家族信託をおすすめします。
家族信託とは
家族信託は、家族による財産管理の手法の一つです。
財産の所有者のかわりに家族が目的に従い財産の管理や運用、処分を行います。
例えば、父が子どもと家族信託を契約したとします。この場合は以下の関係性が成り立ちます(図を参照)。
委託者・受益者=父
受託者=子
家族信託を契約したことにより、受託者である子が父の生活(利益)ために父の預貯金を下ろしたり、不動産を売却したりすることができるようになります。
このように、家族信託が締結されていれば、子は、父の預貯金から治療費を支払ったり、不動産を売却して施設の費用を支払ったりすることができます。
親の財産を子が管理・運用できるよう契約を結んでおくことで、もし親が認知症になったときにもあせらずに済みます。
しかも家族信託に遺言機能を持たせることができます。相続時の資産承継先を指定することができるので相続対策にもなります。
家族信託の詳細は「家族信託とは?仕組みやできること・デメリットもわかりやすく解説!」をご覧ください。
よくある質問
Q:認知症が心配なときは何科を受診すべき?
まずはかかりつけ医に相談しましょう。かかりつけ医から専門の医療機関を紹介してもらえます。概ね以下のような診療科になります。
- 精神科
- 心療内科
- もの忘れ外来
- 認知症専門外来
- 脳神経科
Q:認知症が心配なときは相談できる機関は?
地域包括支援センターは、高齢者の生活を支えるための介護医療や保険、福祉などの公的な総合相談窓口です。地域包括支援センターでは、保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門家がチームとなって、高齢者やその家族のさまざまな相談を受けています。相談は無料です。
地域包括支援センターは認知症に詳しい認知症疾患医療センターなどと連携していますので、もしかして認知症?と漠然とした不安がある方や深刻な状態でない場合はまずこちらに相談するとよいでしょう。
なお、地域包括支援センターは、全ての市町村に設置されていますが、地域ごとに名称が異なる場合もあります。
まとめ
物忘れは自然な現象の一部ですが、認知症は医療介入が必要な深刻な状態です。軽度認知障害が疑われる場合は専門医の診断を受けてみましょう。
また、認知症ではないけれど高齢の親のお金の管理に不安がある場合は家族信託を検討してみたらいかがでしょうか。
どのような対策が最適かは個々の状況によりますので、専門家に相談することをお勧めします。
認知症家族信託ガイドでは家族信託に精通した専門家をご紹介していますので、気軽にご相談ください。