子どものいない夫婦の財産を守る「家族信託」の活用方法|成年後見制度との違いも解説
記事作成日 2024.10.04 / 最終更新日 2024.10.04
子どものいない夫婦が高齢になり、認知症や健康への不安を感じ始めたとき、財産管理や相続の準備をどうするかは重要な課題です。そんなとき「家族信託」は、将来のリスクに備えるための有力な選択肢となります。
この記事では、子どものいない夫婦が家族信託を活用して将来的なリスクにも備える方法をわかりやすく解説します。成年後見制度との違いについても簡単に説明します。是非参考にしてください。
目次
家族信託の基本と仕組み
家族信託は、身近な家族が財産を管理するための方法です。具体的には「委託者」が自分の財産を「受託者」に託し、その財産を「受益者」のために使うという仕組みです。この信託契約を結ぶことで、委託者が亡くなった後も、あらかじめ指定した受益者に財産を引き継ぐことができます。いわば、家族信託は「遺言」と同様の機能も果たすのです。
家族信託については「家族信託とは?仕組みやできること・デメリットもわかりやすく解説!」で詳しく解説しています。
子どものいない夫婦の家族信託での財産管理方法
子どものいない夫婦が家族信託を利用すると、財産を信頼できる人に託すことができます。例えば、妻が所有する不動産や預貯金、有価証券を夫を受託者にして管理を任せることが可能です。これにより、万が一、妻が認知症を発症した場合でも、夫が引き続きその財産を適切に管理でき、生活がスムーズに進行します。
家族信託を活用することで、万一のことがあっても財産管理をスムーズに行えることは大きなメリットでしょう。さらに、信託契約の内容として資産の運用や将来の相続までも、事前に自分で自分の財産について明確な方針を決めておくことができるのも満足度が高いでしょう。
兄弟姉妹や甥っ子姪っ子を予備的受託者に
しかし、子どものいない高齢の夫婦で、先述のように妻が委託者で夫が受託者である場合、受託者である夫が先に亡くなる場合も考慮する必要があるでしょう。このような場合には予備的受託者の指定をします。
予備的受託者とは、委託者より先に受託者が亡くなるなど、何らかの事情で契約の任務を行うことができなくなったときに代わりに財産管理を引き継ぐ者です。第二受託者とも言います。
信頼できる親族や知人を予備的受託者に指定することで、家族信託による財産管理を継続することができます。
例えば、予備的受託者として夫婦の兄弟姉妹や甥っ子姪っ子を指定することで、親族全体で将来のリスクに備える体制を作ることができます。
このように、家族信託を計画する上で信託契約を滞りなく機能するような内容を設計することはとても重要です。家族信託に精通した専門家に相談し、自分たちに最適な方法を見つけましょう。
家族信託の手続きや費用は「家族信託のやり方│手続きの流れと専門家の費用の目安まで全解説」を参照してください。
家族信託と任意後見契約で備える方法
さらに、家族信託に加えて、専門家との任意後見契約を結ぶという方法もあります。
どういうことかというと、受託者や予備的受託者である親族も高齢であるとき、財産管理が困難になった場合に備えて、弁護士、司法書士、行政書士などの専門家が任意後見人として財産を管理しサポートを行うという方法です。
家族信託だけでは対応しきれないリスクに対応するために、専門家との任意後見契約を併用することで、さらなる安心感を得ることができます。
任意後見契約については「任意後見制度とは?手続き方法や費用、注意点を解説」を参照してください。
成年後見制度と家族信託どちらが良いか
「家族信託と成年後見制度、どちらがいいの?」という疑問を持つ方や「家族信託でわざわざ費用をかけて準備するのではなく、認知症などで困った時に成年後見制度を検討すればよいのでは」という考えもあるでしょう。
成年後見制度では、裁判所が後見人を決めるため、必ずしも信頼できる家族が選ばれるとは限りません。後見人に対する報酬の支払いが必要な場合も多くランニングコストがかさみます。また、後見制度は厳格で安心できる反面、始まると定期的な報告義務も発生し手続きや管理に時間と手間がかかります。
家族信託を使えば、信頼できる家族や親族に財産を託すことができ、自由度の高い管理が可能です。
それぞれの制度の違いを理解した上で、自分たちに合った方法を選ぶことが大切です。
家族信託と成年後見制度の比較については「成年後見人制度のメリットとデメリット、家族信託を選ぶべき場合」で詳しく解説しています。
まとめ
家族信託は、子どものいない高齢夫婦にとっても財産管理と生活の安定を確保するためにも有効な手段です。
受託者の選定や予備的受託者の設定、専門家との契約などは、個人の状況に合わせて検討しましょう。
家族信託を検討してみたい方は専門家からまず話をきいてみましょう。認知症家族信託ガイドでは家族信託に精通した専門家をご紹介していますので、気軽にご相談ください。