高齢の父が亡くなった後の認知症の母の相続問題
記事作成日 2024.07.19 / 最終更新日 2024.11.13
高齢の父親が認知症の母親を残して亡くなった場合、相続手続きは非常に複雑になる可能性があります。
今回は、相続人に認知症の母親がいる場合の相続対策について詳しく見ていきます。
認知症の母親がいる場合の相続の問題点
高齢の父親が亡くなり、相続人が認知症の母とその子どもだった場合、父親が亡くなると、相続財産は認知症の母とその子どもの間で分配することになるでしょう(法定相続人のみが相続する場合)。
しかし、認知症の母親が相続人である場合、手続きがスムーズに進まない恐れがあります。理由は、認知症の方が結んだ契約は無効になる可能性が高いため、遺産分割協議には認知症の相続人の成年後見人等が加わる必要があるからです。
認知症の相続人に成年後見人等をつけるためには、家庭裁判所に後見開始の審判を申立てる必要があります。この手続きには、医師の診断書や財産状況の詳細な書類が必要となり、準備と申立てには数カ月かかることもあります。その間、遺産分割は進められません。
成年後見人等の役割
成年後見人等は、認知症の相続人の財産を守るために活動します。そのため、本人の法定相続分を確保することが求められることから、認知症の相続人に対して法定相続分を下回る遺産分割はできないと考えた方がよいでしょう。
「相続人の中に認知症の人がいる場合に困ることと対策」でも詳しく解説しています。
子どもだけが遺産相続すれば解決?
相続では、遺産相続において法律が定めている遺産の分配割合があります。法定相続分といって、遺産を受け取るべき人を「法定相続人」として定め、受け取る割合も決まっています。
どのような場合でも、被相続人の配偶者には必ず相続権が与えられています。なので認知症の母には相続権がありますので、本人の同意なく勝手に子どもだけが相続すると決めることはできません。
相続割合などについては法定相続分と法定相続人|法定相続人の相続順位や法定相続分の計算方法を参照してください。
父親が存命中にできる相続対策
このような事態に備えるには父親の存命中に事前に対策することが必要です。
公正証書遺言を作成
父親が認知機能がしっかりしている場合の対策の一つは「遺言書」を作成することでしょう。遺言書がある場合、遺産分割協議を避けることができます。
できれば、公正証書遺言を作成することをお勧めします。公正証書遺言は、公証人が遺言内容を公正証書として作成するため、法的に強固なものとなります。
遺言の詳細については「遺言書の種類・書き方・作成方法や法的効力をわかりやすく解説」を参照してください。
家族信託をする
家族信託もよい方法です。父親と子どもで家族信託の契約を交わし、父親の財産を子どもが管理します。家族信託には遺言機能もあるため、高齢の父親の財産管理の負担をやわらげ、相続に備えることができるので、一石二鳥の効果が期待できます。
家族信託とは?仕組みやできること・デメリットもわかりやすく解説!で詳しく解説しています。
まとめ
認知症の母親を抱える場合、遺言書の作成や後見人等の準備を早めに行うことで、遺産分割協議を円滑に進めることが可能となります。
このような心配がある場合は、早めに専門家に相談してみましょう。
認知症家族信託ガイドでは家族信託に精通した専門家をご紹介していますので、気軽にご相談ください。