家族信託が強制終了してしまう1年ルール、30年ルールって何?
記事作成日 2024.07.24 / 最終更新日 2024.11.07
家族信託は、認知症による財産の凍結を防ぐための手段として注目されています。
しかし、家族信託は信託法で規制されているので、気を付けたい点があります。この記事では家族信託の契約が強制的に終了してしまう1年ルールと30年ルールについてご紹介します。
1年ルール
1年ルールとは、受託者と受益者が同一という状態が1年間継続すると自動的に信託終了となってしまうことです(信託法第163条2号)。
以下の場合、信託は強制的に終了してしまいます。
- 受託者がいなくなって1年間新しい受託者が現れなかったとき
- 受託者が受益権の全てを持っている状態(受託者=受益者)が1年間継続したとき
受託者や受益者
受託者や受益者とは何かという点ですが、特に家族信託では、以下の関係性を理解することが重要です。
- 委託者:所有財産を信託する人
- 受託者:信託財産の管理処分をする人
- 受益者:信託の利益を受ける人
例えば、父が子どもと家族信託を契約したとします。この場合は以下の関係性が成り立ちます(図を参照)。
1年ルールが強制的に終了するケースを上の図表で考えてみます。
「受託者がいなくなって1年間新しい受託者が現れなかったとき」とは
受託者である(子)が先に亡くなってしまい、1年間新しい受託者が現れなかったケースです。受託者の方が亡くなったら、新しい受託者を選びます。1年以内に新しい受託者が就任しないと強制的に信託は終了します。
「受託者が受益権の全てを持っている状態(受託者=受益者)が1年間継続したとき」とは
受益者である(父)が亡くなり、受託者である(子)が受益者となった状態が1年間続いた場合、強制的に信託は終了します。
意図せずに信託が終了してしまった場合、信託財産が誰のものになるのかという問題がおこる可能性があります。このような1年ルールによる強制終了に対しては、契約に信託が終了した場合の信託財産の帰属先を記載するなどの対策を講じておくことが必要です。
30年ルール
30年ルールとは、複数世代にわたって財産を承継することができる「受益者連続型信託」で次々と引き継がせることができる期限が30年であるということです。
30年ルールの計算方法は法律で以下のように定められています(信託法第九十一条)。
受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から三十年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。
上記の図では30年ルールをイメージで表しています。
つまり、信託開始から30年経過した以後に前の受益者が死亡したことにより受益権を取得した者が死亡したら信託が終了するということです。
もしも、先々まで引き継ぎたい場合は、家族信託を終了させて新たに契約を結び直す必要があるでしょう。
1年ルールや30年ルールのように強制的に終了するのではなく、任意で家族信託を終了させたい場合については「家族信託は途中で辞められる?契約の解除方法や精算業務まで解説」を参照してください。
まとめ
以上、家族信託が強制終了してしまう1年ルール、30年ルールについて解説しました。
このような事態を防ぐためにも、家族信託の計画からプロの力を借りましょう。
とはいえ、家族信託はまだ歴史の浅い制度です。対応していない士業もいますので、経験値の高い専門家に相談しましょう。
認知症家族信託ガイドでは家族信託に精通した専門家をご紹介していますので、気軽にご相談ください。