家族信託は途中で辞められる?契約の解除方法や精算業務まで解説
記事作成日 2024.10.29 / 最終更新日 2024.11.14
家族信託を契約した、もしくは契約を考える際に、契約した後に状況が変わったり、思い直したりしたときに解約や解除できるのか気になる方は多いのではないでしょうか?
この記事では、家族信託を辞めることができるのかということを中心に契約終了後の精算までわかりやすく解説します。
家族信託の概要
家族信託とは家族による財産管理の手法の一つです。
家族信託のしくみでは以下の関係性を理解することが重要です。
- 委託者:所有財産を信託する人
- 受託者:信託財産の管理処分をする人
- 受益者:信託の利益を受ける人
家族信託の場合は、親が委託者となり自分の財産の管理を受託者である子どもに任せ、子どもはその財産を管理し、発生した利益を委託者であり受益者でもある親が得る仕組みにすることが一般的でしょう。もちろん、受託者は子どもでなく兄弟や甥姪などでも契約することができます。
家族信託の仕組みについては「家族信託とは?仕組みやできること・デメリットもわかりやすく解説!」で詳しく解説しています。
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家族信託の途中解約は可能か?
多くの方は以下の2つの疑問があるかと思います。
「やめたいと思ったときに辞められるか」「辞めさせられる場合はあるのか」
まず、この2つの疑問について解説していきます。
やめたいと思ったら辞められるか
家族信託は契約ですので、委託者と受託者の双方が合意すれば辞めることができます。
(委託者及び受益者の合意等による信託の終了)
第164条 委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。
そのため、やめたいときは相手方と相談することになりますが、万一相手方が認知症などの症状が進み意思能力が無い場合は話し合い自体をすることができないため、辞めることができません。
辞めさせられる場合はあるのか
家族信託を契約した後、強制的に辞めさせられる場合があるのかという点については、委託者と受益者が合意することで解任することができます。
また、契約内容の中で信託契約の終了事由を定めていてその事項に該当すれば辞める(信託契約を解除する)ことになります。受託者が契約に反する行為をすれば委託者や受益者は裁判所に解任の申立てをすることができ、損害を与えていれば損害賠償請求をされる可能性もあります。
逆に、落ち度がないのに一方的に受託者を辞めさせられられたことにより損害を受けた場合は、委託者に損害賠償を請求することができます。
気づかずに契約が終了になってしまう場合もある
家族信託は、いつどのような場合に終了するのかは信託法で定められています。そのため、以下信託法第163条に該当すると強制的に信託契約が終了してしまう場合があります。
(委託者及び受益者の合意等による信託の終了)
信託法第163条 信託は、次条の規定によるほか、次に掲げる場合に終了する。
- 信託の目的を達成したとき、または目的を達成できなくなったとき
- 受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したとき
- 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が1年間継続したとき
- 受託者が財産管理に要する費用の償還等を信託財産から受けられないことにより信託を終了させたとき
- 信託が併合(2つ以上の信託の信託財産を1つの信託財産とすること)されたとき
- 信託を終了することを命ずる裁判があったとき
- 信託財産ついて破産手続きの開始決定があったとき
- 委託者が破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定を受けた場合で、
一定の法律の規定により信託契約の解除がされたとき - 信託行為において定めた事由が生じたとき
1年ルールによる終了
先述の信託法第163条2号で定められている「受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したとき」に該当すると自動的に信託終了となってしまいます。
「受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したとき」とは、受託者と受益者が同一である状態を指します。そのため、新しい受託者がいない、もしくは受託者が受益権の全てを持っている状態になった場合で困ったら専門家に速やかに相談しましょう。
また、このような状況に至ることが想定される場合は、家族信託の契約時に対策を講じておくことが重要です。
また、1年ルールの他に30年ルールと言われる「受益者連続型信託」の期限についても注意が必要です。詳しくは「家族信託が強制終了してしまう1年ルール、30年ルールって何?」を参照してください。
家族信託契約終了の事由を定めておく
通常、家族信託を契約する際には、どのような場合に家族信託契約が終了するのかということを定めます。
例えば「委託者及び受託者が死亡した時」「受託者及び受益者が合意した時」など予想される範囲で終了事由を定めておきます。当事者間に争いが生じないように信託契約終了の事由は明確にしておきましょう。
家族信託終了後の清算手続き
家族信託の契約を終了したら清算手続きをおこないます。
精算業務では、信託していた残余財産がどのくらい残っているかを確認したり債務・諸費用の支払いなどの清算をおこない、残余財産を残余財産受益者や帰属権利者に分配します。なお、この精算業務まで信託が存続するものとみなされます。
家族信託の清算方法については「家族信託の終了と清算手続き|残余財産の分配・権利帰属者・精算受託者について分かりやすく解説」を参照してください。
一般的には受託者がそのまま清算受託者となって様々な後処理を行う設定にすることが多いですが、清算受託者と帰属権利者とで指名すれば、これら手続きを専門家に委任することが可能です。また、契約時に別の人を指定することもできます。
信託財産に不動産があれば司法書士へ委任を検討してもよいでしょう。
相続税申告が必要な場合は税理士に、相続手続きや遺言執行に関する業務があれば行政書士に委任することができます。
まとめ
以上、家族信託の解約について解説しました。
家族信託の契約時にはいろいろなケースを想定して契約内容に盛り込むことが大切です。
特にお金についてはシビアで切実な問題です。どのような対策が最適かは個々の状況によりますので、専門家に相談することをお勧めします。
認知症家族信託ガイドでは家族信託に精通した専門家をご紹介していますので、気軽にご相談ください。