認知症発症後からでは遅すぎる?家族信託と判断能力の関係
記事作成日 2024.07.17 / 最終更新日 2024.11.07
親が認知症を発症し、財産の管理をどうすべきか悩んでいる方もいるでしょう。
もっと前にいろいろと対策をしておくべきだったと後悔されている方もいるでしょう。
ただ、認知症と判断が下ったとしても、まだ間に合う場合もあります。
この記事では、認知症による判断能力の低下と家族信託との関係について解説します。
目次
認知症発症と家族信託の関係
家族信託は認知症を発症したらできないのか?という疑問がありますが、認知症を発症したからといって必ずしも不可能というわけではありません。
家族信託を契約するためには本人が意思能力があることが重要なのです。
認知症発症による意思能力の低下とは
意思能力とは、自分が行おうとしていることが自分の権利や義務にどのような影響を持つかについて、ある程度理解できる能力です。
意思能力と似た言葉で判断力がありますが、認知機能について使われる判断力とは「ものごとを決定する力」の他に「自分の状況を把握する力」や「ものごとに集中する力」「ものごとをグループに分けて考える力」などが含まれます。
例えば、認知症を発症した高齢者が普段よく使う道なのに迷ってしまった、迷子になってしまったというのを聞いたことがあるでしょう。これは「自分の状況を把握する力」が衰えたことにより発生します。
認知症発症における判断力がなくなった状態については、意思能力がない状態と同義で考えてもよいでしょう。
意思能力の低下で法律行為ができなくなる
認知症を発症することで、身体が不自由になることに加え、意思能力が無い又は弱くなることで、法律行為ができなくなります。
「意思能力のない者」は民法の第3条2項に該当するためです。
“民法 第3条の2
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。”
つまり、法律行為とはとても簡単にいうと自分の意思で「契約」することです。
認知症の診断
認知症の診断は以下のような医療機関の診療科でおこないます。
- 精神科
- 心療内科
- もの忘れ外来
- 認知症専門外来
- 脳神経科
診断は、本人の問診や家族の面談、身体検査(レントゲン、血液検査、尿検査、血液検査など)、認知症検査(脳画像検査と神経心理学検査など)をおこないます。
詳しくは「認知症の診断の病院選びと診断の流れ・診察を拒否するときの対処法」を参照してください。
認知症を発症した後に家族信託ができる場合とは?
一口に認知症と言っても程度には差があります。
認知症と判断されても親の判断能力の低下の度合いがさほどでなく、信託契約を交わすことを理解できていれば可能な場合もあります。
家族信託とは
家族信託は、家族による財産管理の手法の一つです。財産の所有者のかわりに家族が目的に従い財産の管理や運用、処分を行います。
家族信託は「契約」なので法律行為にあたります。
つまり、意思能力のない者と判断されてしまうと家族信託の契約は結べませんが、認知症発症後であっても意思能力があると判断されれば家族信託を利用できる可能性があるということです。
しかし、家族信託を検討している間に症状が進んでしまうおそれもありますので、認知症を発症している、またはその疑いがある場合は、早急に専門家と相談しましょう。
なお、家族信託の手続きについては「家族信託のやり方│手続きの流れと専門家の費用の目安まで全解説」で解説しています。
意思能力がなくなってからは成年後見人制度
意思能力の低下により本人が理解できず、意思も確認できない場合には成年後見人制度を利用することになります。
成年後見人を付けることで本人に代わって契約手続きをおこなうことができます。
例えば、認知症を発症したことにより銀行口座が凍結したり、実家の売却ができなくなってしまっても、成年後見人によって可能になります。
成年後見人であれば、詐欺などで高価な商品を買ってしまったとしても、契約解除をすることができます。
成年後見制度については「成年後見人とは?選び方や費用、法定・任意後見人と家族信託の違い」で詳しく解説しています。
よくある質問
Q:介護認定によって家族信託できるか判断してもよいか
介護認定は介護の度合いで決まります。認知度を図るものではないため、必ずしも介護認定の分類で判断能力の有無を決めることはできません。介護認定と認知症の関係については「認知症は要介護いくつになるの?介護認定されたら家族信託はできる?」を参照してください。
Q:認知症の診断は誰がするの?
認知症は、医師が複数の検査を総合して診断します。
Q:成年後見制度と家族信託を併用することはできる?
成年後見制度と家族信託を併用することはできます。詳しくは「認知症の備えにはどちらを選ぶ?成年後見制度と家族信託」を参照してください。
まとめ
「家族と言えど、お金の話はしづらい」と思って会話を避けているうちに、時間はすぎていきます。
家族信託を検討してみたい方は専門家からまずは無料面談で話を聞いてみましょう。