認知症は要介護いくつ?介護認定されたら家族信託はできる?

記事作成日 2024.07.19 / 最終更新日 2024.12.10
高齢の親を持つ人や、自分自身が高齢になってくると、認知症に対しての不安がよぎる人は多いでしょう。
では認知症になると、介護認定の介護度はどのくらいなのでしょうか。
この記事では、認知症を発症すると要介護度がどのくらいなのか、また、家族信託は要介護の場合どのくらいで検討した方がよいのか解説していきます。
認知症の症状次第で介護度が違う
病院で認知症と診断されたからといって自動的に介護認定されるわけではありません。
要支援や要介護といった言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。要支援や要介護は7段階に分かれていて介護の度合いを示しています。この介護度は介護認定を受けることによって決まり、認知症の症状次第で介護度が異なります。
認知症と診断されたら、まずは本人が住んでいる市区町村にある地域包括支援センター(高齢者相談センター、高齢者あんしんセンター等)に相談してみましょう。
地域包括支援センターとは?
地域包括支援センターは、高齢者の生活を支えるための介護医療や保険、福祉などの公的な総合相談窓口です。全ての市町村に設置されていますが、地域ごとに高齢者相談センター、高齢者あんしんセンター等名称が異なる場合もあります。
地域包括支援センターでは、保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門家がチームとなって、高齢者やその家族のさまざまな相談を受けています。相談は無料です。
要介護の認定
介護保険が適用される介護サービスを受けようと思った場合に介護認定を受ける必要があります。
介護認定の申請は、介護を必要としている本人が住んでいる市区町村の窓口に届け出ます。
介護認定を受けることで、要支援や要介護状態の度合いが決まります。
介護の度合いは7段階に分かれていて、軽い順から、要支援1→要支援2→要介護1→要介護2→要介護3→要介護4→要介護5の順に重くなります。

なお、介護認定の申請については「介護保険とは?保険料の支払い方法と減免制度を徹底解説」で解説しています。
認知症の場合の介護度
厚生労働省の資料で介護が必要となった主な原因を要介護度別にみると、要介護1~3については第1位の原因が認知症です。要介護4では3番目、要介護5では2番目に多く、要介護1~5全ての上位3位の介護が必要となった主な原因に認知症が入っています。
つまり、認知症で介護認定を受けた人は様々な症状であったことがわかります。

出典:厚生労働省「2022年(令和4年)国民生活基礎調査の概況」
では、ここからは、要介護の度合いによってどのような状況があるのかを説明していきます。
要介護1
要介護1は要介護の中ではもっとも度合いが軽い状態です。身体機能の低下だけではなく、思考力や判断力の低下も見られる状態です。
要介護1の特徴としては以下のようなものがあります。
- 家事や入浴など、日常生活において手助けが必要
- 理解力の低下もみられる
要介護2
要介護2は今までに普通にできていた日常の基本的な行動が不自由になる状態です。
要介護2の特徴としては以下のようなものがあります。
- 入浴や食事などでも、補助が必要になる
- お金の管理など、身の回りのことを管理できなくなる
要介護3
要介護3は身体だけでなく理解力も衰えて、物忘れも多くなる状態です。
要介護3の特徴としては以下のようなものがあります。
- 一人で歩くのが難しく車いすや歩行器が必要になる
- 入浴や排せつも難しく、全面的に補助が必要な状態
要介護4
要介護4は認知症であれば徘徊や暴言のような問題行動が目立ってくるため、家族の負担も大きい状態です。
要介護4の特徴としては以下のようなものがあります。
- 自力ではほぼ歩けず、姿勢を保つのも難しい
- 理解力や思考力も低下し、意思疎通が難しくなる
要介護5
要介護5は最も介護負担が大きい状態を言います。ほぼ寝たきり状態で、本人とのコミュニケーションもあまりできない状態です。
要介護5の特徴としては以下のようなものがあります。
- コミュニケーションをとることも困難で、寝たきりであり、昼夜問わず常時介護が必要な状態
- 飲み込む力も弱くなり経管栄養や吸引といった医療行為が必要になることもある
認知症になると法律行為ができなくなる
認知症によって要介護の状態になると、身体が不自由になることに加え、判断能力などが弱くなります。症状が進行し、意思能力が無くなってしまうと以下のような行為ができなくなります。
- 預金の引き出しなどの取引
- リフォーム工事
- 不動産の売買
- 生命保険の解約や保険金請求
- 相続対策ができなくなる
特に治療費や生活費が預金から引き出すことができなくなってしまったら本人はもちろんサポートする家族も困ってしまうでしょう。
認知症によって要介護を申請した場合は、財産管理についても早急に検討を始めましょう。
認知症を発症しても家族信託ができる場合
認知症に備えた財産管理として家族信託があげられます。
家族信託はその名の通り、家族による財産管理の手法の一つです。財産の所有者のかわりに家族が目的に従い財産の管理や運用、処分を行うことができ、契約によってその財産の管理の内容を決められるので自由度が高いのが特徴です。
ただし、家族信託の契約をすることは法律行為にあたるため、契約が有効になるためには、その人の意思能力の有無が重要です。
先述の認知症の場合の介護度に違いがあるように、一口に認知症と言っても程度には差があります。
認知症と診断されても、要介護度も低く、意思能力があり信託契約を交わすことを本人が理解できていれば家族信託契約を結ぶことが可能です。
そのため、認知症と診断されても、まだ症状が軽い場合には、なるべく早く家族信託について検討する必要があります。
認知症を発症して要介護度の程度が重く、意思能力が無い場合に、本人しかできない法律行為をしたい場合は法定成年後見を利用することになります。
成年後見制度と家族信託、状況ごとの選び方は以下の表を参考にしてください。
現在の状況 | 選択肢 |
---|---|
すでに著しく判断力が低下している、もしくは無い | 法定後見 |
受託者を依頼できる家族がいない | 法定後見、または任意後見 |
自分で選んだ人に依頼したいが家族はいない | 任意後見 |
専門家に依頼したい | 任意後見 |
財産を運用して欲しい | 家族信託 |
自分の指定した方法で財産を管理・運用して欲しい | 家族信託 |
相続についても指定したい | 家族信託 |
家族信託については「家族信託とは?仕組みやできること・デメリットもわかりやすく解説!」で詳しく解説しています。
成年後見制度と家族信託についての違いについては「成年後見人とは?選び方や費用、法定・任意後見人と家族信託の違い」で詳しく解説しています。
まとめ
以上、認知症と要介護の関係について解説しました。
繰り返しますが、記事中の厚生労働省の表で見逃せないのが骨折や転倒が要支援や要介護が必要となった原因の上位3位に入っていることです。
骨折を機に身体の自由がきかなくなり認知症を発症するケースは少なくなりません(「骨折がきっかけで認知症に!?高齢の親がいるなら早めに財産管理を検討」を参照)。
高齢の親が認知症になっても本人が安心して療養できるように、財産管理の方法については早めに検討をしましょう。
認知症家族信託ガイドでは家族信託に精通した専門家をご紹介していますので、気軽にご相談ください。