家族信託は信託銀行でないとできない?違いや銀行ごとのサービスも紹介
記事作成日 2024.07.17 / 最終更新日 2024.10.24
家族信託というと信託銀行の商品と勘違いされる方が多いようです。
「信託」という言葉は、日常生活ではあまり使わない言葉ですし、なんだか堅苦しい感じもしますね。
ここでは、家族信託とは何か、信託銀行でないと家族信託はできないのかという疑問について解説していきます。銀行が提供する家族信託サービスもご紹介します。
目次
信託銀行とは?
そもそも信託銀行はどのような銀行なのでしょうか。
信託銀行も普通の銀行と同様に預金、貸出、為替などの銀行業務をしています。
信託銀行は銀行業務以外にも「信託業務(財産を預かって、管理・運用する業務)」と「併営業務(遺言保管や執行、企業の株主名簿管理等の業務)」を行っています。
一般の銀行に比べ店舗数が少ないのと、法人向けが多いことで馴染みがない人が多いかもしれませんが、個人でも、普通の銀行と同様に利用できます。
銀行で取り扱う家族信託との違い
では、銀行の家族信託サービスと、専門家がサポートしている家族信託ではなにが違うのでしょうか。
家族信託とは?
家族信託とは家族による財産管理の手法の一つです。
財産の所有者のかわりに家族が目的に従い財産の管理や運用、処分を行います。
家族信託は民事信託なので、報酬を目的にしたものではないため無償でおこなうことが多く、基本的には家族や親族間で契約を結びます。これをサポートしているのが専門家が提供している家族信託サービスです。
一方、銀行で扱う家族信託サービスは商事信託です。商事信託は営利目的で財産を預かるため、「信託業法」や「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」による免許・認可が必要です。
この違いについては「民事信託と家族信託の違いは?商事信託についてもわかりやすく解説」で更に詳しく解説しています。
家族信託は登録商標
実は「家族信託」という言葉は家族信託普及協会が登録商標した名称です。信頼できる家族に財産の管理処分を任せる民事信託の手法を家族信託と呼称するのであれば使用してよいとされています。専門家が提供しているサービスは民事信託のサポートです。
銀行の家族信託サービス
一般的な銀行でも家族信託サービスを展開していますのでご紹介します。
オリックス銀行:eダイレクト家族信託
オリックス銀行eダイレクト家族信託のサイトでは、家族信託とは何かを知りたい方、費用や手続き方法を知りたい方など、具体的な質問をお持ちの方へ向けた窓口を設けています。オリックスグループの銀行であることが強みです。不動産を保有していたりする場合はオーダーメイドでの家族信託を組成するサービスもおこなっています。
りそな銀行:資産承継信託
日本の五大銀行に数えられるりそな銀行。家族信託サービスとしてパッケージサービスタイプのハートトラスト、オーダーメイドタイプのマイトラストを展開しています。信託する金額が50万円以上、500万円未満ならハートトラスト、1000万円以上はマイトラストとおすすめするサービスが異なり、内容も変わります。強みは圧倒的な知名度と銀行としての規模感でしょう。
横浜銀行:はまぎん・おかねの信託
神奈川県内の企業のメインバンクのシェアにおいてナンバーワンを誇る横浜銀行。横浜銀行のはまぎん・おかねの信託は、横浜銀行が受託者となり、100万円から申し込める「遺言代用機能」と、500万円から申し込める「受益者代理人特約付」があります。
千葉銀行:家族で安心みまもり信託
千葉県企業の主力銀行として千葉銀行の県内でのシェア率はトップ。家族で安心みまもり信託は500万円以上から始められ、追加信託は100万円以上1万円単位でできます。口座から払戻しがされると指定した家族に通知する機能もあります。
信託銀行の家族信託サービス
信託銀行の家族信託サービスをご紹介します。
三井住友信託銀行:セキュリティ型信託・安心サポート信託
信託銀行大手主要3社に数えられる三井住友信託銀行。セキュリティ型信託は振り込み詐欺などの金融犯罪等に備える出金の管理に重点を置いたもので500万円以上から申し込めます。定期的に生活資金の支払いも可能。安心サポート信託ではオーダーメイドの財産管理も扱っています。
みずほ信託銀行:認知症サポート信託
みずほ信託銀行は、グループ連携が強いといわれるみずほグル―プの信託銀行。認知症にフォーカスした認知症サポート信託は手続代理人を本人の3親等以内の親族等を選び、引き出しの際はみずほ信託銀行が請求書や領収書をチェックして払い出しをする仕組みです。ただし、1件あたりの払い出しは10万円以上で、用途は、医療費や介護費や税金などの制限があります。
銀行の家族信託のメリット・デメリット
メリット
銀行が受託者として財産管理を行うため、信頼度が高いのが最大のメリットでしょう。
また相続発生時に迅速な資金受取ができます。通常、相続が発生すると、口座が凍結し、遺産分割協議が完了するまで亡くなった人の口座からお金を引き出すことはできません。遺産分割前に相続人が引き出せる制度もありますが、引き出せる金額に制限があり、手続きも複雑です。しかし、家族信託を利用すると、相続が発生した際に相続人が必要な資金を迅速に受け取ることができます。
デメリット
家族信託商品の大きなデメリットは、基本的に金銭しか信託できない点です。例えば、居住用不動産は対象外となるため、別の手段を講じる必要があります。
他には、少額では利用できない、契約時以外にも毎年一定の費用がかかるものも多いため、トータルで見ると高額になることが少なくありません。
専門家の家族信託サービス
家族信託は、司法書士や弁護士、行政書士などの専門家に依頼できます。
家族信託は民事信託なので、基本的には家族や親族間で契約を結びます。これをサポートしているのが専門家が提供している家族信託サービスです。
専門家の家族信託サービスは、それぞれの状況に合わせた内容で設計することができるのが最大のメリットでしょう。
費用については、銀行が展開しているサービスと比較すると、ランニングコストがかからないことが多いです。
まとめ
家族信託は、家族間での財産管理を可能にする制度であり、銀行が提供する家族信託サービスとは関連する法律や性質が異なることがお分かりいただけたと思います。
家族信託によって、認知症などのリスクにも対応できるため、家族の将来を見据えた最適な方法を選びましょう。
認知症家族信託ガイドでは家族信託に精通した専門家をご紹介していますので、気軽にご相談ください。