民事信託と家族信託の違いは?商事信託についてもわかりやすく解説
記事作成日 2024.09.27 / 最終更新日 2024.09.27
最近「民事信託」や「家族信託」という言葉を耳にする機会が増えたという方もいるでしょう。
近年、相続対策や認知症対策の一環として、信託制度が注目されています。その中で「民事信託」や「家族信託」といった言葉がよく使われていますが、違いがよくわからないという人も多いかもしれません。この記事では、民事信託と家族信託の違いについてわかりやすく解説します。
民事信託と家族信託って何?
民事信託と家族信託は、どちらも「財産を誰かに預けて管理してもらう」仕組みです。
民事信託は、営利(お金を稼ぐための目的)ではなく、家族や信頼できる人がその財産を管理する仕組みを指します。家族信託というのは、特に家族に財産の管理を頼む場合をいいます。
つまり、民事信託と家族信託は、ほぼ同じ意味であり、法的な違いもなく、呼び方が違うだけなのです。
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なぜ民事信託や家族信託が必要なの?
民事信託や家族信託は、特に高齢の方が認知症などになって、判断力が低くなってしまったときに役立ちます。たとえば、高齢の親が自分の財産をしっかり管理できなくなったとき、あらかじめ信頼できる子どもにその財産を預けておけば、困ることが少なくなります。
また、家族信託は、遺言書の代わりとしても有効で、次世代相続(数次相続)まで指定でき、普通の遺言書よりも先の世代(例えば子どもや孫まで)に財産を確実に引き継ぐことができます。
家族信託の仕組み
家族信託では、以下の関係性を理解することが重要です。
- 委託者:所有財産を信託する人
- 受託者:信託財産の管理処分をする人
- 受益者:信託の利益を受ける人
例えば、父が子どもと家族信託を契約したとします。この場合は以下の関係性が成り立ちます(図を参照)。
委託者・受益者=父
受託者=子
家族信託を契約したことにより、受託者である子が父の生活(利益)ために父の預貯金を下ろしたり、不動産を売却したりすることができるようになります。
このように、家族信託が締結されていれば、子は、父の預貯金から治療費を支払ったり、不動産を売却して施設の費用を支払ったりすることができます。
家族信託についての詳細は「家族信託とは?仕組みやできること・デメリットもわかりやすく解説!」で解説しています。
民事信託・家族信託と商事信託との違い
「商事信託」という言葉もありますが、これは民事信託や家族信託とは少し違います。
商事信託は、信託銀行や信託会社といったお金のプロが、手数料をもらって財産を管理する仕組みです。つまり、商事信託は営利(お金を稼ぐこと)が目的なのです。商事信託では、不特定多数の者を対象に業務として信託が行われ、金融資産の管理や運用がメインとなります。
一方、民事信託や家族信託は、家族や親しい人が管理してくれるので、営利目的ではありません。自分の家族に財産の管理を任せたい場合には、民事信託や家族信託を使うのが良いでしょう。
「家族信託は誰に頼む?専門家と銀行の特徴や違いを知って相談を!」ではさらに詳しく解説しています。
商標としての「家族信託」
「家族信託」という名称は、一般社団法人家族信託普及協会によって商標登録されています。この名前を登録したのは、もっと多くの人に家族信託を知ってもらいたいという理由からであって、普通の家族が財産を管理するために使う場合は、自由に使って大丈夫です。
まとめ
民事信託と家族信託は、法律的な違いはなく、ほぼ同じものとして扱われます。
家族信託は、特に認知症リスクや相続対策として有効であり、財産を長期的に管理するための手段として利用されています。信頼できる家族に、家族信託を使って財産の管理をお願いすることで、安心して財産を守ることができます。
また、商事信託は銀行などが行うもので、手数料がかかりますが、プロに管理を任せられるという点が違います。どちらを選ぶかは、その人の状況や目的によって決めると良いでしょう。
特にお金についてはシビアで切実な問題です。家族信託を検討してみたい方は専門家からまず話をきいてみましょう。認知症家族信託ガイドでは家族信託に精通した専門家をご紹介していますので、気軽にご相談ください。