親族が成年後見人になれないケースとは?選ばれるためには?
記事作成日 2024.07.11 / 最終更新日 2024.10.22
認知症等で成年後見制度の利用を検討している場合、本人が信頼している親族が後見人になってあげたいものです。
しかし、親族が後見人になれないケースもあります。
この記事では、親族が後見になれないケースや、親族が後見人に選ばれるために知っておくべきことについてご説明します。
なお、成年後見人については「成年後見人とは?選び方や費用、法定・任意後見人と家族信託の違い」で詳しく解説しています。
是非、参考にしてください。
欠格事由のある人は、成年後見人になれない
以下の欠格事由のうち、いずれか一つにでも該当する人は、成年後見人になれません。
- 未成年者
- 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人※
- 破産者で復権していない人
- 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
- 行方の知れない者
※家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人」とは家庭裁判所で親権の喪失や財産の管理権の喪失の宣告を受けた親権者、家庭裁判所の職権で解任された保佐人や補助人がこれに該当します。
親族が成年後見人になれないケース
欠格事由がないからといって、必ず、後見人になれるわけでありません。
成年後見を開始するためには、本人(被後見人となる人)の住所地の家庭裁判所に後見開始申立てをします。その申立書には申立人が推薦する後見人候補者を記入します。なお、後見人候補者は親族でも親族以外の人でも構いません。
家庭裁判所では、申立書に記載された候補者が適任であるかどうかを審理します。その結果、候補者が選任されない場合があります。
それは、本人が必要とする支援の内容などによっては、候補者以外の人(弁護士、司法書士、社会福祉士等の専門職や法律または福祉に関する法人など)を後見人に選任することがあるからです。
また、候補者である親族を後見人に選任したうえで、専門職の後見監督人を選任する場合もあります。
次のいずれかに該当する場合は、候補者以外の方を後見人等に選任したり、監督人を選任したりする可能性があります。
- 親族間に意見の対立がある場合
- 流動資産の額や種類が多い場合
- 不動産の売買が予定されているなど、申立ての動機となった課題が重要な法律行為を含んでいる場合
- 遺産分割協議など後見人等と本人との間で利益相反する行為について、監督人に本人の代理をしてもらう必要がある場合
- 後見人等候補者と本人との間に高額な貸借や立替金があり、その清算の可否等について第三者による調査、確認を要すると判断された場合
- 従前、後見人等候補者と本人との関係が疎遠であった場合
- 年間の収入額及び支出額が過大であったり、年によって収支に大きな変動が見込まれたりなど、第三者による収支の管理を要すると判断された場合
- 後見人等候補者と本人との生活費等が十分に分離されていない場合
- 申立時に提出された財産目録や収支状況報告書の記載が十分でないなどから、後見人等としての適格性を見極める必要があると判断された場合
- 後見人等候補者が後見事務に自信がなかったり、相談できる者を希望したりした場合
- 後見人等候補者が自己もしくは自己の親族のために本人の財産を利用 (担保提供を含む。)し、または利用する予定がある場合
- 後見人等候補者が、本人の財産の運用 (投資等)を目的として申し立てている場合
- 後見人等候補者が健康上の問題や多忙などで適正な後見等の事務を行えない、または行うことが難しいと判断された場合
- 本人について、訴訟・調停・債務整理等の法的手続を予定している場合
- 本人の財産状況が不明確であり、専門職による調査を要すると判断された場合
被後見人に多額の財産や一定の継続的収入がある場合や、親族間に利害の衝突や対立があるような場合には、第三者の後見人が選ばれます。この場合に選ばれるのは、弁護士や司法書士等の専門家です。
なお、被後見人の財産管理面ではなく、身の回りのお世話や介護等の面で親族がこれを後見人として引き受けるのが難しい状況の場合、社会福祉士等の専門家が選ばれることもあります。
また、財産管理を行う後見人と身上監護を行う後見人が複数選ばれる場合もありますし、社会福祉法人等の法人が選ばれる場合もあります。
なお、後見人等の選任に関する判断については、不服の申立てはできません。
また、候補者以外の人が後見人に選任されたり監督人が選任されたりすることに不満がある場合に申立ての取下げを申し出たとしても、本人の利益に配慮して、許可されない可能性が高いと考えられます。
成年後見人の親族の割合
では実際に成年後見人になった親族はどのくらいなのでしょうか。
以下は最高裁判所で公開されているデータです。令和4年に選任された成年後見人のうち、親族と親族以外のそれぞれの割合は、親族が19.1%、親族以外が80.9%です(図1)。
図1(出典:最高裁判所「成年後見関係事件の概要 令和4年1月~12月」)
親族が後見人になる割合は多いと感じたでしょうか。それとも少ないと感じたでしょうか。
このように、現状では親族以外が成年後見人となることが多いようです。
親族の内訳
それでは、親族の中でもどんな関係性の人が後見人になったのでしょうか。
こちらも最高裁判所で公開されている前述と同時期のデータです。親族が後見人となったケースにおける内訳は子どもが53.4%、次いで兄弟姉妹が14.9%、その他親族17.4%、配偶者7.5%、親6.8%でした(図2)。
図2(出典:最高裁判所「成年後見関係事件の概要 令和4年1月~12月」)
親族が後見人に選ばれるためには
親族が後見人に選ばれるためには、次の2点に気を付けるとよいでしょう。
- 親族の同意書を集める
- 家庭裁判所での面接に備える
1.親族の同意書を集める
前述のとおり、親族間に意見の対立がある場合は、候補者以外の専門職後見人が選任される可能性が高まるため、誰が後見人になるかについて親族間で意見を一致させ、同意書を家庭裁判所に提出するとよいでしょう。
親族全員の同意書は不要です。
同意書が必要なのは、推定相続人のみです。
推定相続人とは、その時点において相続が開始された場合に、相続人になると推定される人のことです。
なお、推定相続人にでも、未成年者については、同意書は不要です。
また、音信不通の人や、認知症等で同意書の内容を理解することが難しい人についても無理に集める必要はありません。
2.家庭裁判所での面接に備える
申立て後、申立人と後見人候補者は、家庭裁判所で面接があります。
面接では、申立人に対しては、本人の状態や申立てに至る事情など、候補者に対しては、欠格事由の有無や後見人等としての適格性に関する事情、後見等の事務に関する方針が尋ねられます。
家庭裁判所に、後見人としてふさわしいと思ってもらえるように、しっかりと説明できるようにしておきましょう。
まとめ
以上、親族が後見人になれないケースや、親族が後見人に選ばれるために知っておくべきことについて説明しました。
親が高齢で意思能力が十分なうちに財産管理の対策を取れば、成年後見人でなく、他の選択肢も選ぶことができます。
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