「遺言信託」と「遺言による信託」との違いやメリット・デメリット「遺言代用信託」についても解説
記事作成日 2024.07.19 / 最終更新日 2024.10.21
信託銀行の店頭で遺言信託のポスターやチラシを見かけたことはないでしょうか。
この「遺言信託」と似た言葉で「遺言による信託」があります。まるで言葉遊びのようですが、大事な財産をスムーズに相続したいと考えている方は是非この違いを知っておきましょう。
この記事では、「遺言信託」と「遺言による信託」の違いや、遺言信託のあまり知られていないメリット、デメリット等について説明します。「遺言代用信託」についても解説します。
「遺言信託」と「遺言による信託」の違いは?
「遺言信託」という言葉には、全く異なる2つの意味があります。
ひとつは、信託銀行が顧客の遺言の作成をサポートし、かつ、その遺言における「遺言執行者」となるサービスの商品名です。
もうひとつは、遺言で「信託行為」の意思表示を行うことであり、法的にはこちらの使い方が正しい用語の使い方です。
サービス商品としての「遺言信託」
信託銀行のサービスとしての遺言信託は、銀行が遺言執行者となってくれるサービスです。
遺言執行者とは遺言執行(遺言の内容を実現する)手続きを担当する者をいいます。
遺言で信託行為の意思表示をする「遺言による信託」
遺言での「信託行為」の意思表示とは、法的な意味で信託行為を遺言によって行うというものです。
「信託」とは、例えばAがその所有する不動産の名義をBに移転し、Bによって賃貸に出すなどの管理をして家賃収益をあげさせ、その家賃収益をAの妻Cに生活費として渡してもらうというように、一定の目的を定めて財産を他人に移転して、その管理、処分など一定目的の達成のために必要な行為を行ってもらうことです。
Aを委託者、Bを受託者、Cを受益者といいます。
ごく平たく言えば、自分の財産を他人に運用してもらって、利益は自分の指定した者(自分でもよい)に渡してもらうというスキームです。
この信託を行うには、委託者と受託者の間で信託契約を結ぶ方法が一般的ですが、委託者が遺言によって受託者に信託をお願いすることもできます(もちろん、受託者となるように遺言された者は承諾するか否かを選択できます)。
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遺言信託のメリット
信託銀行の遺言信託サービスにおけるメリットとは何でしょうか?
安心感がある
遺言執行者は、未成年者と破産者以外ならば誰でもなれます(民法1009条)。
実際には弁護士、公証人、税理士といった専門家を遺言執行者とすることが一般的ですが、一人で経営する個人事務所の場合が多いので、遺言者よりも先に死亡してしまうというリスクがあります。
そうなると再度、遺言執行者を選び直す必要があります。
しかし信託銀行なら、そのような心配はなく、個人よりも安心感があります。
アドバイスをもらえる
もともと信託銀行は、顧客から信託された資産を運用することが本業です。
信託銀行側は遺言に記載された顧客の資産内容から、その有効活用に関する積極的なアドバイスを行います。
これは弁護士、公証人、税理士にはなかなか期待できない強みです。
遺言信託のデメリット
では逆に、信託銀行の遺言信託サービスにおけるデメリットとは何でしょうか?
信託銀行でなくてはできないサービス部分がほとんどない
まず信託銀行でなくてもできるサービスが多いことでしょう。
- 遺言の内容について、事前に相談にのってくれるのは、専門家も同じ
- 公正証書遺言は作成するのは公証人
- 遺言書の正本の保管は公証役場が保管してくれる
- 遺言者が死亡した後の遺言執行は、遺言執行者であれば誰でもできる
- 定期的に資産状況や遺言の見直しの必要性の照会サービスは専門家も同じ
手数料が高額
遺言信託の手数料は、各信託銀行によって細かい違いがありますが、枠組みはほとんど同じです。
基本料金だけで数十万円、公正証書遺言の正本の保管料が年額数千円、遺言書の内容を変更する手数料として数万円、実際に遺言執行を行う場合には遺産内容に応じて100万円単位の執行手数料というプランが多いようです。
実際の費用については各銀行等でご確認ください。
生前に金融機関にお金を預けておく「遺言代用信託」
「遺言代用信託」は、金融機関にお金を預け、自分自身が存命中は自分の為に管理運用し、死後は、自分が指定しておいた人にお金が払い出されるという仕組みです。
信託できるのは現金のみであり、また、ランニングコストもかかります。メリットとしては、信託した財産は遺産分割の対象にならないので、遺留分に気を付ければ自分の望む人に財産を渡すことができることなどがあげられます。
遺言信託との違いは、遺言信託では実際に遺言書を作成しているかどうかです。
まとめ
以上、遺言信託について説明しました。
遺言信託の大きなメリットは銀行という安心感と資産の積極的活用のアドバイスを受けることができるという点です。遺言代用信託も同様でしょう。
家族信託であれば、生前から運用を開始することができます。
ご自身はどんな対策を取った方がよいのか、一度専門家と相談してみましょう。
認知症家族信託ガイドでは家族信託に精通した専門家をご紹介していますので、気軽にご相談ください。