家族信託を活用して、姪に遺産を確実に渡す方法と財産管理【相談事例】
記事作成日 2024.07.19 / 最終更新日 2024.09.26
過去にいただいた相談事例をもとに、家族信託を活用することで、認知症における財産管理と相続の問題を解決する方法を解説していきます。
この記事では家族信託を活用することで、財産管理の柔軟性と相続手続きの円滑さを確保し、安心した老後を過ごすための具体的な対策を解説します。
【相談事例】姪に財産管理をお願いして遺産を残したい
「独身で高齢になり、将来の財産管理を信頼できる姪に任せたいと考え、認知症のリスクや相続手続きの複雑さを踏まえたうえで、最適な方法として家族信託を検討しています。」
このような相談について解説します。
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家族信託とは
家族信託は、信頼できる親族に財産管理を委ねる方法です。
民事信託とも呼ばれ、信託法に基づく財産管理の手法ですので、成年後見制度とは全く別のもので、家庭裁判所は関与せず親族だけで完結します。
家族信託契約を結ぶことで、認知症になった場合でも財産管理がスムーズに行われます。これにより、成年後見制度の問題点を回避できます。親族ですから無報酬とすることが多いです。
家族信託のしくみ
家族信託では、以下の関係性を理解することが重要です。
- 委託者:所有財産を信託する人
- 受託者:信託財産の管理処分をする人
- 受益者:信託の利益を受ける人
例えば、父が子どもと家族信託を契約したとします。この場合は以下の関係性が成り立ちます(図を参照)。
委託者・受益者=父
受託者=子
家族信託を契約したことにより、受託者である子が父の生活(利益)ために父の預貯金を下ろしたり、不動産を売却したりすることができるようになります。
このように、家族信託が締結されていれば、子は、父の預貯金から治療費を支払ったり、不動産を売却して施設の費用を支払ったりすることができます。
成年後見制度だったらどうなる?
成年後見制度では、後見人が家庭裁判所によって選任され、報酬が発生する場合があります。また、資産の運用は制限されるため、柔軟な財産管理が難しいのです。これに対し、家族信託では、契約内容を詳細に定めることで、柔軟な対応が可能です。
成年後見制度との比較は「成年後見人制度のメリットとデメリット、家族信託を選ぶべき場合」で詳しく解説しています。
家族信託なら姪への財産の管理も受け渡しもできる
家族信託では、委託者(=相談者様)がまだ元気で判断能力があるうちに、自身の信用のおける人(=姪)との間で契約を結び、財産管理を任せることができます。また、家族信託に遺言機能を持たせることもできます。
「自身が認知症になった後、姪に財産管理を任せ、最終的には相続させたい」という希望を家族信託の契約一つで叶えることが可能です。
家族信託の具体的な手順
家族信託を開始するには、まず信託契約書を作成します。この契約書には、信託財産の範囲、信託の目的、受託者の権限などが明記されます。次に、信託財産を信託口座に移し替え、信託契約を公正証書として確定します。これにより、法的に有効な信託が成立し、財産管理が開始されます。
家族信託の具体的な方法については「家族信託のやり方│手続きの流れと専門家の費用の目安まで全解説」でわかりやすく解説しています。
家族信託のデメリット
家族信託の最大のメリットは、信頼できる親族に財産管理を任せることができる点です。契約内容により、資産運用も可能です。遺言機能があるのもメリットでしょう。しかし、契約書の作成では、財産管理でできること等全てを契約書で定める必要があり、その作成が難しく、不備がないように慎重に対応する必要があります。
また比較的新しい制度なので、この分野に精通した専門家が少ない現状もあります。
まとめ
家族信託を活用することで、認知症のリスクに備えた財産管理が可能となります。どのような対策が最適かは個々の状況によりますので、専門家に相談することをお勧めします。
認知症家族信託ガイドでは家族信託に精通した専門家を無料でご紹介していますので、気軽にご相談ください。