兄弟に知らせないでできる?親の財産管理で勝手に家族信託、リスクやデメリットは?
記事作成日 2024.08.16 / 最終更新日 2024.09.04
家族信託を検討しているけれど、さまざまな事情で兄弟などの親族に知らせるべきか悩んでいる人もいるでしょう。
この記事では、家族信託を兄弟に知らせずに行うことが可能かどうか、またその影響について解説します。
目次
家族信託とは何か
家族信託について兄弟などの家族や親族に知らせるべきか悩んでいる場合、まずは家族信託とはどのような仕組みでどのような関係性なのかを知っておく必要があります。
家族信託は、「委託者(受益者)」と「受託者」の同意で締結される契約です。委託者は、目的のために自分の財産のすべて、または一部を受託者に託します。この託された財産を「信託財産」と言います。受託者は託された財産を、契約書に定められた方法で管理・運用します。
家族信託の主な当事者
家族信託のしくみでは以下の関係性を理解することが重要です。
- 委託者:所有財産を信託する人
- 受託者:信託財産の管理処分をする人
- 受益者:信託の利益を受ける人
この関係性を簡単な例をあげて説明していきます。
例:父と子の家族信託契約
例えば、父が子どもと家族信託を契約したとします。この場合は以下の関係性が成り立ちます(図を参照)。
委託者・受益者=父
受託者=子
家族信託を契約したことにより、受託者である子が父の生活(利益)ために父の預貯金を下ろしたり、不動産を売却したりすることができるようになります。
このように、家族信託が締結されていれば、子は、父の預貯金から治療費を支払ったり、不動産を売却して施設の費用を支払ったりすることができます。
ただし、契約していない財産は対象外です。
家族信託についての詳細は「家族信託とは?仕組みやできること・デメリットもわかりやすく解説!」で詳しく解説しています。
もしかして認知症かな?と思ったら
認知症簡易チェックテスト
家族信託を兄弟に知らせる必要があるか
家族信託は契約であって、法律上、委託者と受託者の契約で成立しますので兄弟などの親族の同意は必要ありません。
また、家族信託を設定したことを、兄弟などの親族に通知する法的な義務もありません。
家族信託は私的な契約であるため、兄弟などの親族に同意を求めたり契約したことを知らせるかどうかについては基本的に当事者の自由です。
兄弟に知らせずに家族信託を設定するデメリット
兄弟に知らせずに家族信託を行った場合の、家族内での信頼関係や将来的なトラブルの可能性やデメリットを説明します。
家族信託の契約を行ったことを知らされなかった兄弟は一般的にはどんな心境の変化が起こるでしょうか。
驚きと困惑
家族信託が契約されたことを後から知った場合、なぜ自分に知らせてくれなかったのかと驚き、困惑する可能性があります。
家族内で重要な決定がなされたにもかかわらず、自分が知らされなかったことから、家族間の信頼関係に疑問を抱く可能性もあるでしょう。
疎外感
自分が家族の重要な意思決定から排除されたと感じることで、家族から疎外されているという気持ちが生じることがあります。自分の意見や感情が軽視されたと考える場合もあるでしょう。
不信感
家族信託の内容によっては、自分に不利な条件が設定されているのではないかと疑い、不信感が募ることも考えられるでしょう。
怒りや悲しみ
それまでは兄弟間で信頼関係が強かった場合、知らせてもらえなかったことを裏切りと感じ、怒りや悲しみが生じてしまうかもしれません。
不安
家族信託が他の兄弟にとって不利益な内容である可能性があるため、将来の相続や財産分配に対する不安を抱くことも考えられます。
上記のような感情面で兄弟の関係性が悪くなるリスクは兄弟に知らせずに家族信託を設定する大きなデメリットと言えるでしょう。
理解と共感
兄弟が知らなかったことに対して湧き上がるのはネガティブな感情だけではないかもしれません。兄弟が自分に知らせずに家族信託を契約した理由を理解し、共感するケースもあります。たとえば、本人が連絡の取れにくい仕事に就いていたり、遠方にいる場合など特定の事情や家族の利益を考えての決断だと納得できる場合もあるでしょう。
さらに、家族信託に関する定期的な家族会議を開くことで、財産管理の進捗状況を共有し、家族全員の理解と協力を促進することができるでしょう。
自分だけで契約書を作った場合のリスク
家族信託の契約書を自分との家族のために作成するにあたって、何か資格が必要なわけではありません。自分たちだけで契約書を作成することもできます。
しかし、内容に不備があると以下のようなことが起きる場合があります。
将来問題が起こる
例えば、委託者が親であり受益者も親になるところを、受益者を自分にしてしまったとします。この場合、贈与税がかかる恐れがあります。
また、家族信託に遺言機能を利用して自分にすべて託すように書いてしまうと、後々の相続における遺産分配で、兄弟が異議を唱える可能性があるなどのリスクがあります。
このように、自分たちだけで契約書を作成することで将来問題となってしまう可能性に気づかないリスクがあります。
契約内容が変わってしまう
インターネットで検索すると家族信託契約書のひな形などを簡単に見つけることができます。しかし、個人個人事情が違うため、そのひな形を使って作ったとしても、契約内容に過不足があり、意図した効果が得られない場合もあります。
また、契約内容の重要な事項に関わる部分で誤字・脱字があったり、契約内容についての表現があいまいであると、契約内容そのものが変わってしまう恐れがあります。
このようなリスクを抑えるためには専門家に相談した方がいいでしょう。
兄弟に知らせない場合のトラブルへの対策
家族信託を設定する際に兄弟に知らせないことで、あとから、使い込みをしているのではないか?などとあらぬ疑いをかけられてトラブルに発展しないように、現金の管理であればきちんと信託口口座を作って受託者の財産を別管理にする、用途を明確に記録しておくことも重要です。
契約時に親が認知機能がしっかりしていることも大事なポイントです。
兄弟に知らせる場合のメリット
兄弟をはじめ、家族全員が信託の内容を理解し、協力することで、先述のような感情的なトラブルを回避できます。
透明性を確保することで、家族間での誤解や不安を減らし、円滑な財産管理が実現できます。また、将来的な争いを避けることもできるでしょう。
財産管理が長期間続くことになるため、家族全員でお互い助け合いっていける関係性を築くことが理想です。
まとめ
兄弟などの身近な家族に知らせるか知らせないかは、個々の家族の状況や関係性によるものですが、兄弟に知らせないで家族信託を契約することは、家族内での関係に大きな影響を与える可能性があることを解説しました。そのため、慎重に検討することが重要でしょう。
専門家に相談することで、最適な家族信託の設定方法を見つかるかもしれませんので、検討している場合は、まず専門家に話をきいてみることから始めましょう。
認知症家族信託ガイドでは家族信託に精通した専門家をご紹介していますので、気軽にご相談ください。