生活にゆとりがある高齢者、認知症への不安には家族信託で対策を
記事作成日 2024.07.17 / 最終更新日 2024.11.13
生活にゆとりがある親は、子どもの立場としては親の老後の生活費の心配をしなくていいのは大変助かることです。
しかし、ゆとりがあるからこそ、次世代へ渡すための生前対策、相続対策が必要です。
この記事では生活にゆとりがある高齢者の不安に思うこと、不安に備える家族信託についてご紹介します。
高齢者の不安とは?
内閣府による 令和2年版高齢社会白書によると、「高齢者の経済生活に関する意識」では、60歳以上の人の約4分の3が経済的な心配をしなくても生活をしているとの結果がでました。
ゆとりのある高齢者の心配ごとは?
では、経済的な心配をしなくても生活をしている高齢者は経済的な面ではどのような心配ごとがあるのでしょうか。
以下の表を見ると、一番心配なのは「医療・介護費がかかる」次いで「施設に入ることになったときの費用」「生活費が足りなくなるかもしれないという不安」と続きます。
出典:内閣府ホームページ令和2年版高齢社会白書(概要版)
4番目は「認知症などにより、財産の適正な管理ができなくなること」で、全体の2割を占めます。
5番目は「自分が亡くなった後の相続などを含む財産の管理」と、自分が亡くなった後の心配をする方が8.7%でした。
この結果から分かった高齢者の心配ごとの中で、具体的な対策することで、心配の度合いを小さくすることができるのはこの4番目「認知症などにより、財産の適正な管理ができなくなること」と5番目「自分が亡くなった後の相続などを含む財産の管理」でしょう。
認知症でできなくなることは?
「認知症による財産管理ができなくなる」ことへ約2割の方が心配している理由は、高齢者の5人に1人が認知症になるといわれていることから、自分事としてとらえているからでしょう。
では、認知症になるとどのようなことができなくなるのでしょうか。
認知症になると法律行為ができなくなる
認知症になると、身体が不自由になることに加え、意思能力が無い又は弱くなるために法律行為ができなくなります。
契約は法律行為
法律行為とは法律効果を発生させることを目的とした人の意思表示から成る行為をいいます。
法律行為は契約、単独行為、合同行為の3つに区分されますが、高齢者が心配する財産の管理は主に「契約」によるものです。
認知症になってできなくなる法律行為は具体的には以下のようなことが挙げられます。
- 預金の引き出しなどの取引
- リフォーム工事
- 不動産の売買
- 生命保険の解約や保険金請求
認知症と物忘れの違いは「物忘れと認知症の違いは?事例と影響をわかりやすく解説」で解説しています。
高齢者の不安、財産管理の対策方法
認知症に備えて財産管理をお願いしたいと思っても、財産管理をしてもらう相手はだれでもいいわけではありません。銀行や身近な家族にお願いしたいと思う人が多いのではないでしょうか。家族にお願いするにしても、口約束だけだと何となく不安・・・。そんな不安を解消してくれるのが家族信託です。
家族信託
家族信託は、家族による財産管理の手法の一つです。
財産の所有者のかわりに家族が目的に従い財産の管理や運用、処分を行います。
家族信託の仕組み
家族信託は以下のような関係性があります。
- 委託者:所有財産を信託する人
- 受託者:信託財産の管理処分をする人
- 受益者:信託の利益を受ける人
例えば、父が子どもと家族信託を契約したとします。この場合は以下の関係性が成り立ちます
委託者・受益者=父
受託者=子
家族信託を契約したことにより、受託者である子が父の生活(利益)ために父の預貯金を下ろしたり、不動産を売却したりすることができるようになります。
家族信託については「家族信託とは?仕組みやできること・デメリットもわかりやすく解説!」で詳しく解説しています。
銀行のサービスの家族信託との違い
銀行でも家族信託といったサービスをおこなっています。しかし、これは家族間で行う家族信託とは異なり、「商事信託」と呼ばれ、銀行が受託者となる商品です。信頼度は高いかもしれませんが、費用も高額であることが多いです。
家族信託と銀行のサービスの違いは「家族信託は信託銀行でないとできない?違いや銀行ごとのサービスも紹介」で詳しく解説しています。
高齢者の不安、相続対策の方法
先述の内閣府の調査の中で自分が亡くなった後の相続などを含む財産の管理も高齢者の不安の一つに挙げられています。では、相続対策はどんなことがあるでしょうか。
相続対策は主に大きく2つに分けることができます。
- 相続税に対する対策
- 相続手続きの対策
それぞれを簡単に解説します。
相続税の対策
相続税の対策には生前贈与や生命保険を検討することが多いです。
どちらも、遺産を少なくして相続財産額を減らすことで、相続税額をおさえる効果が期待できます。
生命保険についての詳細は「生命保険が相続対策になる理由は?メリット、デメリットを分かりやすく解説」で解説しています。生前贈与については「相続税と贈与税の違い|生前贈与をする・しない、トータルで税負担が少ないのはどっち?」を参照してください。
相続手続きの対策
相続人が困らないように相続手続きに対しても対策を取ることができます。
例えば、遺言書を書いておくと相続人同士のトラブルを防ぐ効果の他、銀行などの相続手続きがスムーズに進められる効果も期待できます。なお、家族信託でも遺言の機能があります。
どのような対策をとるべきかは、人それぞれですから、専門家に一度相談することがおすすめです。
【事例】高齢の父と認知症の母。父の相続対策をしたい(53歳女性 資産3,930万円)【行政書士執筆】
まとめ
以上、生活にゆとりがある高齢者の不安について解説してきました。
「家族と言えど、お金の話はしづらい」と思って会話を避けているうちに、時間はすぎていきます。
相続経験者の話でも一番後悔しているのがコミュニケーション不足でした。
相続経験者からのアドバイス│生前にしておけばよかった3つのこと
高齢の親を持つ人は一度、経済的なことで不安がないか聞いてみてはいかがでしょうか。
特にお金についてはシビアで切実な問題です。管理方法については家族信託がおすすめです。認知症家族信託ガイドでは家族信託に精通した専門家をご紹介していますので、気軽にご相談ください。